介護職員の看取りの研修(案)
アルツハイマー病は進行性でありゆっくりながらも死に至るまでの病気です。施設によっては医療と連携して看取る事もあるかと思います。その上で事前の研修も必要ですので一案となるようなものを考えて見ました。事業所によって大きく違うと思いますので参考程度に捉えて下さい。
①看取りとなる前に
〇催し物などの際に撮った顔写真は確保しておく。
〇ご利用者が終末を安心して迎えて頂けるように普段から良い関係をしっかりと築いておく。
〇ご利用者の終末の意向や生活歴・身体状況・趣味・嗜好など把握しておく。
〇安楽な終末のためにも拘縮や褥瘡の予防はターミナルとなる前から行う必要である。
〇医師の看取りの診断後もすべての方がマニュアルの段階を踏み死去されるわけではなく、常に急な状態の変化が起こることを念頭におく。
②終末ケアの主な流れ
Ⅰご利用者の身体的変化が進む
(食事量の変化、元気がない、動きが少ない、口数が減った、声が小さくなった、脈拍の変化、呼吸が荒い、顔色が悪い、バイタルの異常など)
Ⅱ介護職員から医療(看護師)への報告・相談
医師の回診、往診
(・老衰や認知症進行の症状・苦痛の緩和が施設のケアで可能かどうかの判断・一過性の状態、いずれかの判断がでる)
Ⅲターミナル対応の決定
ケアマネージャーやリーダーや相談員などからご家族へ報告し、今後の意向を確認する。
*「終末期の看取り等についての事前確認書」を事前に書いていただいている場合も現在と意向が異なることがあるため、ご希望の変更がないかどうかを確認する。
・病院での対応・施設での対応・ご自宅での対応のいずれかとなる。
・病院での対応・施設での対応・ご自宅での対応のいずれかとなる。
Ⅳカンファレンスの実施
ご本人の状況や家族の意向を元にケアの方向性を決定する。参加職員:家族、ケアマネージャー、栄養士、看護師、相談員、介護職員など
検討内容:食事・排せつ・清潔の維持・環境整備・体位姿勢・精神的関わりを話し合う
検討内容:食事・排せつ・清潔の維持・環境整備・体位姿勢・精神的関わりを話し合う
Ⅴ看取り計画書の最終決定
計画書の家族同意(計画書へのサインを頂く)
・エンゼルセット・写真・ご本人が愛用されていたお見送りの品など事前準備をする。
危篤時の時期
・呼吸困難(無呼吸や喘鳴が現れる)・筋の緊張性の低下・反射機能の低下・脱水症状・失禁・発汗・口腔の乾燥と臭気・顔相の変化・嚥下障害・食事摂取不能・末端冷感・苦痛程度の変化(消失または増強)・意識障害の出現(意識消失)・チアノーゼ・血圧は徐々に低下し触診法で測定となる
Ⅵ事前に決めておいた状態になれば担当者へ報告し、指示を受ける。
事前に下顎呼吸や心肺停止など報告する状態を決めておく。
①担当職員
②ご家族様への連絡
①担当職員
②ご家族様への連絡
③病院へ搬送対応
⑤医師による死亡判断
Ⅶ後日ご家族様が荷物を取りに来られる。
以上
③詳細、注意する点
・バイタル測定しづらい時、個人差がありますので、どのようにすれば測定しやすいかを職員で統一し、難しい場合には医務に確認しておく。
・顔写真があれば準備しておく。
・(あれば)看取りの記録用紙へ変更する。
・職員の接遇の注意点
*不快に思わせない言葉づかいや、あいさつを意識する。
*面会時には経過を説明する。
*面会時には経過を説明する。
*家族とのコミュニケーションを通して、ご希望・意向の変化があれば随時スタッフ間の報連相を行い取り入れていく。
・環境作り
*見守りしやすく状態の変化に気づくことができるようにする。
*緊急対応時を想定した空間の配慮。(ストレッチャーへの移乗を想定しておく)
*清掃やしつらえを整え、家族も安心して看取れるようにしておく。
・水分や食事は無理のない量を摂取して頂く。体調が変化しやすい事を踏まえその時の本人の調子に留意する。
・誤嚥のないよう特に表情や嚥下状態など本人の調子を観察し、介助方法の随時検討が必要となる。
・看護師から清拭・入浴の時期やその方法の指示を受け、行う。
・呼吸の安楽な姿勢として、仰臥位では呼吸がしづらいため側臥位で肩や頭をやや高くすることを基本とする。しかし高齢者の看取りでは安楽な呼吸の他にも褥瘡や拘縮、痰なども考慮して体位を取るので肩枕の必要性など適当な体位は個々のケースに合わせて違うため他職種を交え継続して検討して行く。
・本人の楽しかった思い出など語り合うコミュニケーションを意図的に持つ。
・皮膚は褥瘡、チアノーゼ、皮膚疾患など変化しやすくなり、こまめな状態変化の観察が必要になる。
・拘縮予防に加え、より褥瘡予防に重点を置き、除圧の体勢を整える。クッションを使用するときも痛みがないよう表情などを観察し丁寧に行う。
・段階的な意識レベルの確認方法を把握しておく。意識レベルの確認として、都度 痛覚での確認はしなくても良い。意識レベルの確認として添付参考資料を参照。
・普段の食事の他に好みのものを口にしていただく場合は食品やその形態、タイミングもカンファレンスの検討課題にする。
・ご家族がご利用者の死去される際の立会いを希望される場合、苑に来訪するまでの手順を決めておく。
・エンゼルセットの準備
ゆかた(寝間着など指定があれば)、シャツ、フェイスタオル2枚、紙オムツ、小パット、義歯⇒1つにまとめておき危篤時などにすぐ持ち出せるよう居室に置いておく。
・尿量の減少、濃縮尿、閉尿は目安となりますが必ず順を追って経過するものではない。尿の色や量は継続した観察が必要となる。
・呼吸の種類
*腹式呼吸(腹部を動かしてする呼吸)
*胸式呼吸(胸郭を広げてする呼吸)
*下顎呼吸(下アゴを動かしてする呼吸 死期が近い)
*努力性呼吸(腹式だけでは筋力が足りず下顎呼吸、肩呼吸、胸式呼吸等で補う呼吸の総称)
・バイタルサインの正常値
*脈拍 高齢者 60-70 (成人60-80) 除脈50以下 頻脈100以上
*呼吸 成人 15-20
*血圧 成人 平均値 120/80
*体温 36.0-37.2
・生命の危険信号となるバイタルサイン
*脈拍 1分間40回未満
*呼吸 1分間無呼吸
*血圧 収縮期血圧(上の数値)60mmHg以下でショック状態となる可能性がある
*収縮期血圧(上の数値)230mmHg以上で脳出血の可能性がある
*体温 35.0℃以下または42.0℃以上
・搬送前にエンゼルセット・写真・ご本人が愛用されていたお見送りの品など事前準備していたものを搬送の同行者に渡す。
*脈拍 1分間40回未満
*呼吸 1分間無呼吸
*血圧 収縮期血圧(上の数値)60mmHg以下でショック状態となる可能性がある
*収縮期血圧(上の数値)230mmHg以上で脳出血の可能性がある
*体温 35.0℃以下または42.0℃以上
・搬送前にエンゼルセット・写真・ご本人が愛用されていたお見送りの品など事前準備していたものを搬送の同行者に渡す。
・職員間でご利用者の入苑時から死去後までの振り返りを行い、職員の反省や改善・意欲の向上に繋げる。
・死去後にご家族が来苑された際には万葉苑での経過においてどうだったかお伺いする。
・参考資料:意識レベルの確認基準(スケール例)
エマージェンシー コーマ スケール(ECS)
刺激をしても覚醒しない状態
レベル300 痛み・刺激に全く反応しない。
レベル200 痛み・刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる。
レベル100 痛み・刺激に対し、払いのけるような動作をする。
刺激をすると覚醒する状態
レベル30 痛み・刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼する。
レベル20 大きな声又は体を揺さぶることにより開眼する。
レベル10 普通の呼びかけで容易に開眼する。
刺激をしなくても覚醒している状態
レベル3 自分の名前・生年月日が言えない。
レベル2 時・人・場所がわからない(見当識障害)。
レベル1 大体意識鮮明だが今ひとつはっきりしない。
レベルクリア 上記のような症状が無く、全く問題の無い状態。